コラム Pet

相性もあれば、やきもちも焼く

ご相談の中で、行動トラブルの一つとして挙がってくる相性・やきもちについてお話ししてまいります。人が誰とでも仲良くできるのか?やきもちは妬かないのかと言ったら答えは、NOになります。人と人の間にも、合う・合わないは生じます。大切な人に気持ちが強く向き、大切な人が自分以外と好ましい関係性にあれば、気持ちが自分に向かずに不機嫌にもなります。感情が導く地図通りに行動が起きるのです。

20数年前に大型犬ブームがありました。そのころ、保護された犬たちのある場所でお世話とトリミングを行っていたことがあります。怖いおもいをしてきた子、理由がわからなくても飼い主さんが居なくなったたくさんの犬たち。もうすでに成犬ですが、それぞれの個性をしっかりと持っています。相性が合わない犬同士は、お部屋や排せつの時間、遊ぶ時間、お散歩の時間と分けていくことが必要でした。それでも、何かの拍子に扉が一度に開いてばったり鉢合わせをしてしまう。一触即発の状況。お互いが噛み合う、その瞬間にそのころの私にできたことは、自らの手を彼らの前に振りかざすこと。いつも優しいゴールデンの子はしっかり噛んだ場所が私の手であったことに、瞬時に気づき、姿は慌て謝罪の目で口を開き離します。今でも思い出す光景で、諸先輩方に手を出すよりできることがあると注意をうけた想い出です。話をもどしますね。お互いの感情が寄り添うことが難しい場合が動物たちにもあります。今は室内飼いの猫ちゃんたちですが、窓から出入りできる時代の猫さんたちの暮らしで、良く耳にするのは、後から来たことの相性が合わずに先住のコが家を出ていってしまうという現象。追い出される場合もあったことでしょう。

たくさんいればいるだけ、配慮も一匹一匹の気持ちの汲み取りも必要になってくるのです。それはもう幼稚園さながらです。個でいるより良いだろうと考える。その裏側には、個であることを大切にすることを忘れてはいけないのです。一匹だと寂しいだろうから。それは彼らの気持ちでしょうか。共に暮らすということは配慮を忘れずに。

やきもちについてお話していきます。やきもちの現れ方はそれぞれ違ってきます。様子に現れないからといって、やきもちをやかないと決めてしまうのはとても怖いことです。やきもちがわかりやすい子と我慢するタイプの子がいます。わかりやすい子の例をお話ししますね。先ほどのお話しでた保護している子たちのトイレタイム。犬舎には大型犬だけの部屋に8匹いました。ゴールデン、ラブラドール、ダルメシアン。このダルメシアンのコが、私を好いてくれていました。熟知していることなので、全体でいるときは特に気を付けて対応していました。ある日こんなことが起こります。ほかのスタッフが犬舎から出して、元気に走り回るのを、上の階から眺めていたら、彼らが気づきます。下からきゅんきゅん鳴くダルメシアン。黒ラブのコが気になったので、階下のスタッフと会話した時に黒ラブちゃんの名前を口にしました。その瞬間、体当たりと甘噛み、、、。黒ラブちゃんはとばっちりを受けたんですね。もうやきもちの塊。感情を素直に表現する子は、わんぱくで素直です。それはカラダともリンクします。調子が悪い時は症状がわかりやすく軽度に済むことが多いということ。逆に、やきもちを我慢するタイプの子は、どこまでもひとり我慢大会をします。人と似ていますよね。痛くても痛くないという。寂しくても寂しくないという。静かになって甘えたい相手がフリーになるまで待ってから、そっと近づいたりもします。そこでありったけの愛情で触れて抱きしめてあげられていたら、きっとその子は幸せでしょう。あわただしく離れてしまったら、、、。そんな行動も、彼らは学びます。我慢する子はどうするでしょうか?書き記さなくても浮かんでくるイメージが彼らのとる行動になっていくのです。

同時に全く異なる性格のコを迎えて暮らしていくということは、それぞれを尊重し配慮することが必要。この縮図は、なあなあにしてしまいがちな家族の中のヒントにも繋がります。

相性もあれば、やきもちもある。お互いが愛をもって尊重し配慮する。だからこそ“共に”が成り立つのではないでしょうか。

 

記 仙華 こと 須藤千治